中国

公園の使われ方の例(上海)

中国の大公園は太極拳など武術、体操器械運動などスポーツ、歌踊り凧揚げなど趣味、雑談など交流を楽しむ人でにぎやかである。その利用内訳は李ほかの上海市黄浦公園を対象とした調査(*1,2)では武術37%、交流27%、スポーツ22%、交流14%。このうち健身器材を使ったものは7%である。また利用形態は組織化された集団での利用が大半のようである。

(*1)李ほか「中国の都市公園における市民の朝の利用活動に関する研究ー上海市黄浦公園を対象として」日本建築学会計画系論文集Vol73 No.633 2008/11

(*2)李ほか「上海市黄浦公園における近年も利用集団の変遷に関する研究」日本建築学会計画系論文集Vol74 No.644 2009/10

健身路径

健身路径は20世紀80年代欧米経済発達国家にはじまったもので、比較的環境のいい公園、緑地、河原などに一定の距離を置いて運動器具を配置し、その器具の間を小道で結んでいるので健身路径と呼ばれている(*訳注 欧米ではfitness trail, fitness path)。各器材には、その傍らに名称、鍛錬方法、主要な効能、安全に関する注意、ときには図説、鍛錬時の消費カロリー、評点基準などを書いた看板が立ててある。器材の材料には木材やFRPが多用され、自然と調和する色彩を採用している。そのような環境の下で鍛錬するのは楽しいものである。

 中国では1996年9月全民健身計画綱領のもと、広州の天河体育センターにできた多効能健身路径が最初の健身路径である。全民健身路径の建設は日ごとにます広範な人民の体育に対する需要を満足させ、体育の発展を推進し、さらに人と人の関係を強め、社会の文明水準を向上させ、社会の安定の確保に寄与してきた。2010年5月末までに、国家体育総局は体育くじの益金6.4億元を投入し、全国各地に1万の全民健身路径建設を援助した。これが引きがねになって、15万か所の全民健身路径ができた。全民健身路径は占有面背区が狭く、投資額も低額、作るのも簡単、便利ということで広範な人民にうけいれられ、人々が鍛錬するために非常にいい条件を提供し、人々の健康づくりと遊びの伴侶となった。(人民出版社、「健身路径指南」の広告文より)

最近(2012年)の達成状況

中国体育局馬建中副局長の談話(2013/4月)によると2012年までに、全国で「農民健身ルート(健身路径)」即ち「ルートプロジェクト(路径工程)」が34.86万ヵ所建設された。行政村数の55%を占め、資金投入額は153.43億元にのぼる。2014年、全国体育局長会議における国家体育総局局長劉鵬の演説によると、さらに積極的に「第12期5ヵ年公共スポーツ施設の建設計画」の実施を推進し、2013年には体育総局に本級のスポーツ宝くじの公益金約133億元を投入した。現在建設の農民健身ルート(健身路径)は5万か所、「雪炭プロジェクト(*1)」は190個、新しいGB健身路径(*2)の器材は1,192セットを購入し、国家級体育指導員として3,803人を養成したという(笹川財団報告を引用)。

*1)「雪炭プロジェクト」とは、中国の辺境地区と中部西部地区の貧困地域スポーツフィットネス施設建設を支援したプロジェクト

*2)「GB」とは、屋外健身器械の安全標準号のこと。全称は「GB19272-2011」

健康遊具

馬らの”身体活動の推進手段としての「健身路径」の紹介”(仙台大学紀要Vol45No2)によると、安全基準を満たした健康遊具は約20種ある。多くは日本では見られない可動式のもので、鍛錬していて楽しく、しかも複数人が同時にできるものも多く、コミュニケーションの場となっている。一部の遊具の使い方については動画に納めてあります。
遊具はほとんど中国で製造されているようです。これはその一例の北京体育用品公司です。米国、欧州、スペイン、オーストラリヤ、シンガポール、マレーシヤ、トルコ、イスラエルなどに輸出していると書かれています。

健康遊具の問題点

学術雑誌「中国体育科技」上などにかなりの論文が掲載されている。これまでの論文数などをまとめた調査報告もある。以下はその一例。

全容と問題点など

全国に十数万箇所以上の健身路径ができたが、管理不足、指導員不足などで問題も発生しているようだ。

姜莹莹:全民健身路径工程的知晓率和使用现状评价《中国体育科技》2013年 第2期

”中国での全民健身路径の認知率と使用状況”の要旨

<方法>18歳以上の360名を対象にした抜き取りアンケート。

<アンケート結果>

  • 全民健身路径の認知率は      69.9%
  • 鍛錬期間中快適な気持が維持できた  61%
  • 快適な睡眠が得られた       36.8%
  • 運動によるけがなかった      93.5%
  • 使用説明を読んで使い方を確認した 30.1%

<問題点>

  • 器材の数が少ない
  • 鍛錬場所に管理人がいない
  • 鍛錬時の安全対策が足りない
  • 器材がおんぼろ

<結論と提言>

  • 健身路径の認知度は高い
  • 器材による鍛錬効果は高い
  • 器材の安全性は高い
  • 使用法についての科学的指導が必要
  • タイミングよく機材を更新することが必要

その他論文

构建和谐社会视角下建设健身路径的现实意义:

我国健身路径工程特徴と未来発展、李ほか、中国体育科技Vol41、No4

中国全民健身路径工程発展履歴 問題と対策 浙江体育科学 2101年